肥前国平戸藩の第9代藩主であった松浦静山が記した随筆『甲子夜話』の未刊 第二 巻之二十六には、舞子浜に現れた舟幽霊について記されたくだりがる。人吉候(肥後藩主)の侍医であった佐藤宗隆が江戸に向う道中、播州舞子浜で舟幽霊を見たという。 舞子浜に舟幽霊が現れるのは稀有な事らしいのだが、その日の夜は陰火(注1.)が海面を走ったかと思うと、間も無く4尺(約 1.2m)あまりのクラゲのようなものが漂ってきた。よく目を凝らして見るとその上には人の姿があり、水夫に向って何か言いたそうに船に近づいてきた。そこで、水夫たちは手早く苫(注2.)を焼いてこれ(舟幽霊)に投げ掛けると消えていったという。 これは海で亡くなった者の成仏できない魂だと伝え、これ(舟幽霊)が現れた時は、苫を焼いて投げ掛けるか、松明(たいまつ)で船べりを照らし、松明の火の粉を振り掛ければ消えたという。 (画像は歌川広重『六十余州名所図会』より「播磨 舞子の浜」) 伝承地:兵庫県神戸市垂水区 舞子浜 注1. 陰火(いんか) : 墓場などで幽霊、妖怪などが出るとき燃えて浮遊するといわれる不気味な火。鬼火や狐火。 注2. 苫(とま) : 菅(すげ)や茅(かや)を編んだ莚(むしろ)や菰(こも)のような掛け物で、小船や小屋を覆って雨露をしのぐのに用いた。
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