おやぎつねのふくしゅう
親狐の復讐


伊丹市の小屋口村(昆陽口村、現在の伊丹市宮ノ前一丁目、中央二丁目界隈)でのこと。
十一、二歳の子供四、五人が狐の子供を二匹捕まえ、前足を縛り、更に二匹の尾と尾を繋いで放し、後から追い掛け回すなどしていて、遂には子狐を殺してしまった。
それを知った親狐は子供を殺された無念の思いから子狐を殺した子供のうちの一人の親に取り憑いた。
それからというもの、親狐に憑かれたその者はやれ油揚げを食べさせろ、やれ魚を食べさせろと言いだし、また我が子(子狐)を生かして返せと無理難題を言って家の者を困らせていた。
加持祈祷を毎日行うも一向に狐は離れようとせず、遂には医者も親類も成す術なく匙を投げてしまうという有様だった。

ある日、その話を聞いた近所の猟師がやって来て、自分が狐を落とせば狐に憑かれた者から(狐は)離れると言ったので、家族は出来る事は何でもしてみようという気でこの猟師に頼むことにした。
猟師は家の者に油揚げを出来るだけ塩辛く煮て、魚の塩漬けにしたものと共に狐に憑かれた者に十分に与え、寝る時には枕元に湯や水を置かないようにし、雨戸は開けたままにしておいてくれと言った。
やがて家の者皆が寝静まった頃、猟師は鉄砲を構え隣の部屋で狐に憑かれた者の寝息に耳をそばだてていた。
次第に夜も更け、辺りが静寂に包まれる中、奥の間の時計の針が二時を指し示した。
暫くすると、縁先の手水鉢のところから「ビシャビシャビシャビシャ」という何者かが水を飲む音が聞こえる。
次の瞬間、猟師が音のする方に向けて障子越しに鉄砲を放つと、そこには胴を撃ち抜かれた一匹の狐が倒れていた。
狐が撃たれた瞬間、狐に憑かれた者は「ワッ」と驚いたが、すぐに何事もなかった様にまた眠った。
その後、この者は普段通りに戻ったという。

長野新聞 明治九年七月二十四日

伝承地 : 兵庫県伊丹市宮ノ前一丁目、同市中央二丁目付近

参考資料 : 湯本豪一編. 地方発 明治妖怪ニュース. 柏書房株式会社, 2001

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