ナナカマス


奥須井の集落 その昔、四国から遊びに来ていた姫が但馬海岸の「ななかます」と呼ばれる海で溺れ死んだ。
それ以来、その海を船が通ると、姫の「伊予(現在の愛媛県)や讃岐(現在の香川県)の者なれど今は住む住むななかます」という悲しい歌声が何処からともなく聞こえてきたという。

但馬海岸周辺で「ななかます」と呼ばれる場所が何処なのかは定かではない。
また、この話が伝わる奥須井の集落は海岸より山間部に入った集落で、海には面していない。
参考までに書くと、愛媛、香川ではないが、同じ四国の高知県の幡多(はた)地方には「ななかます」という地名がいくつか見受けられ、四万十市具同、土佐清水市宗呂、幡多郡大月町弘見、同大月町清王などに小字名として残っている。
『中土佐町誌』によると、古老の話として「カマス(蒲簀、叺)は籾を入れる藁などで編んだ袋で、これに約四斗(米1俵)の籾が入るので、これが七つ入るくらい取れる田のことではないか」とある。
高知県の「ななかます」は、七俵もの米がとれる良田があるという意味で、佳名として「ななかます」という名(地名)が付けられたと考えられる。

伝承地:兵庫県豊岡市竹野町奥須井

参考資料 : 中土佐町史. 中土佐町(高知県), 1986
兵庫県教育委員会文化課編. 但馬海岸地区民俗資料緊急調査概報 <兵庫県民俗調査報告>. 兵庫県教育委員会, 1974

追 記 : R5.01.27
土佐清水市の宗呂下(そうろしも)地区に残る「ナナカマス」の地名は、津波でカマス(スズキ目カマス科の海水魚)が海から3kmも離れたこの場所まで宗呂川を遡って流れてきたことに由来するという。個人的には、この話は地名から起こった後世の付会ではないかと思われる。
また、本州から九州にかけて自生する落葉高木のフサザクラの別名を「ナナカマス」という。フサザクラの生えていた場所にナナカマスの地名が付いたという事も考えられないだろうか。
和歌山県、愛知県に「七釜子」(ななかます)姓の方が居られるが名字の由来については詳らかではない。

#幽霊 #海 #高知県