つ ち ぐ も た り み み
土蜘蛛 垂耳

~ 王 居 殿 ~


王居殿 土蜘蛛とは絵巻『土蜘蛛草紙』や能、歌舞伎に登場する巨大なクモの妖怪。『土蜘蛛草紙』に登場した土蜘蛛は身の丈二十丈(約 60m)もあり、源頼光に退治された時、その腹の中からは千九百九十個もの生首が出てきたという。
土蜘蛛の歴史は古く、その起源を辿ると「記紀」(『古事記』と『日本書紀』)の時代にまで遡るといわれる。
そもそも土蜘蛛とは、古代、大和朝廷に従属せぬ民達を異族視して呼んだ蔑称で、彼らが手足が長く、穴を掘って住んでいたことから土蜘蛛と呼ばれたらしい。
『日本書紀』の「神武紀」には「身短くして手足長し、侏儒(ひきひと)(注1.)と相にたり」とあり、同「景行紀」には朝命に従わず、石窟に住む民を土蜘蛛と書いている。また、『常陸国風土記』には「狼の性、梟(ふくろう)の情」を持つ者ともある。これらの土蜘蛛の首長の名は、「記紀」をはじめ、各地の風土記にも見受けられる事から日本の各地にこれら朝廷に従属せぬ民達が居たと思われる。

兵庫県神戸市垂水区に「王居殿」(おういでん)という地名がある。これこそは、古代攝津の国に割拠した土蜘蛛の長「垂耳」(たりみみ、たるみみ)の館があった所だという説があり、同区内の海(わたつみ)神社の存在に絡めて、古代朝鮮半島より北陸地方に上陸した綿津見(わたつみ)族の流れを汲む者であったのではないかと言われている。
また、王居殿のある「垂水」(たるみ)という地名も「たるみみ」が訛伝して「たるみ」になったという説もある。
しかし、王居殿は「大井田」等が語源かも知れず、垂水の地名の起源にしても、近くに複数の滝(駒捨の滝、琵琶の滝、恩地の滝、白滝)があったことから「たるみ」と名付けられたとする説が有力であり(古くは滝のことを垂水(たるみ)と言っていた)、「記紀」の時代の事ゆえ何ら垂耳の存在を傍証するものが無いのは残念なことである。

伝承地 : 兵庫県神戸市垂水区王居殿

注1. 侏儒(ひきひと) : 背丈のきわめて低い人。また、滑稽なわざを職とした短躯(背丈の低い)の人。矬、低人とも書く。

参考資料 : 川口陽之. 垂水史跡めぐり. 垂水区役所広報相談課, 1977
川口陽之. 小説 五色塚物語. 中田印刷出版社, 1977

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