ゆ び き り お と こ
指切り男


夜道で突然何者かに腕を掴まれる。何が起きたのかと驚く間もなく、親指にリングのような奇妙な機械をはめられ、そのまま親指を切り落とされる。
この指切り男は、特定の国の人だけを襲おうといわれている。もし捕まってしまったら、即座に「日本人です!日本人です!」と二度叫ばなければ、問答無用で指を奪われてしまうという。
なぜ特定の国籍に固執し、親指を狙うのか、その真意は定かではない。

古来より日本において「親指」は、魂が出入りする特別な場所と考えられてきた。 今はあまり聞かなくなった風習だが、霊柩車を見かけたら親指を隠すというものがある。そうしないと「親の死に目に会えない」「親が早死にする」といった俗信があるが、その根底にあるのは「死者の魂が親指から入り込むのを防ぐ」という魔除けの概念に基づいている。
この風習は江戸時代まで遡り、当時は葬列(野辺送り)に遭遇した際に親指を隠していたという話が残っている。江戸後期の国学者、小山田与清の随筆『松屋筆記』にも、「左右の爪の間から魂魄(こんぱく)(注1.)が出入りするため、畏怖を感じる時は拳の中に指を握り隠す」との記述がある。また、夜道で狐に化かされないため、あるいは疫病を避けるためにも、親指を握り込むことが有効だと信じられてきた。

指切り男が親指を執拗に狙う背景には、あるいはこうした魂の出入り口を封じる、あるいは奪うといった呪術的な意味が潜んでいるのかもしれない。

こうした「特定の言葉を言わなければ危害を加えられる」といったパターンの都市伝説に「口裂け女」や「トンカラトン」がある。
口裂け女は、大きなマスクをした若い女が、学校帰りの子供などに「私、綺麗?」と訊ねてくる。「綺麗」と答えると、「これでもか!?」と言いながらマスクを外し、耳元まで大きく裂けた口を見せつける。「綺麗じゃない」と答えると、包丁や鋏で斬り殺される。
トンカラトンは、全身を包帯で巻き、日本刀を携えた姿で「トン、トン、トンカラ、トン」と口ずさみながら自転車に乗って現れる。遭遇した者に「トンカラトンと言え」と言ってくる。その通りにすれば何もせずに去っていくが、言わないと刀で斬り殺される。
トンカラトンに斬られた者はトンカラトンにされてしまうという。

伝承地 : 三重県(津市?)

2016年

参 考 :
・ トンカラトン - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/トンカラトン

注1. 中国の道教や伝統中国医学における霊についての概念。精神的な「魂」(こん)と、肉体的な「魄」(はく)の二つから成り、死ぬと魂は天へ昇り、魄は地に帰ると考えられていた。 転じて、死者の霊を意味することもある。

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