た つ だ や ま の か っ ぱ
立田山の河童


立田山の池には河童がいるという伝説がある。
立田山の河童はもともとは弓削(熊本県熊本市北区弓削)にある白川の赤岩ん淵(赤岩の淵)に棲んでいたという。
その時の話が「赤岩ん淵の八つ目」として語り継がれている。
それによると、この辺りでは毎年、河童に尻子玉を抜かれて弓削の子供が亡くなっており、村人たちは頭を悩ませていた。
ある日のこと、釣りに来た二人の村人が岩の上で昼寝をしている河童を見付けこれを捕まえた。
二度と悪さをしないように村に連れて帰って懲らしめてやると言ったところ、必死で河童は許しを請う。二度と子供の尻子玉を抜くことはしないと言うので、許してやることにした。
そして、捕らえられた河童が言うには、村人の願いも聞くのだから自分達の願いも聞いて欲しいという。
河童が言うには赤岩ん淵の底には恐ろしい「八つ目の化け物」いる。この化け物を退治してくれたら二度と子供たちの尻子玉を抜くことはしないと再び誓った。
河童を哀れに思ったのか、そこで村人たちは力自慢の若者を集めて、赤岩ん淵に船を出した。
一人の若者が化け物を確かめるために飛び込むと、淵の底に八つ目の化け物がいる。若者は船の仲間を呼びみんなでこの化け物に縄をかけ船へと引きずり揚げた。
淵の底から引き揚げられた化け物は、なんと「千歯」(千歯こき)(注1.)だった。その様子を見ていた河童たちは、引き揚げられた千歯を見て化け物が現れたと驚いて立田山の方へと逃げて行った。
それ以来、弓削のあたりでは川で溺れ死ぬ子供は一人もいなくなった。
この時、白川の赤岩ん淵から逃げて来た河童が立田山の河童だという。
この話は、『まんが日本昔ばなし』でも「赤岩ん淵の八つ目」として放送された。(放送日:昭和53年(1978)09月30日)
八つ目の化け物の「八つ目」は物理的に八つの目があるのではなく、「八」には数が多いという意味合いがあるようで(例として、八百万神(よあおよろずのかみ)、八千代、八重垣、八十山、八百八町、八百八橋など)千歯こきの櫛状の歯をこのように譬えたものと思われる。

河童が棲むという立田山の池なのだが、立田山周辺にはいくつかの池があり、どの池なのか(あるいは複数の池なのか)は定かではない。
主な池としては、立田山北方の「立田山憩の森」にトンボ池、サクラ池(万石池)という二つの大きな池があるが、これらの池はいずれも人工池である。南麓にある「立田自然公園」には肥後熊本藩主、細川家の菩提寺であった龍田山泰勝寺の跡があり、その前にも大小三つの池がある。

河童(妖怪)の話とは少し違うが、立田山は心霊スポットと呼ばれているらしく、電話ボックスやトイレに幽霊が出るという話があるようだ。

伝 承 地 : 熊本県熊本市北区弓削
伝 承 地 : 熊本県熊本市北区龍田 立田山


参考資料 : 木村様よりお聞きした話
『読みがたり熊本のむかし話』 熊本県小学校教育研究会国語部会 編集 日本標準 発行(2004) ほか


注1. 千歯こき : 稲刈り後、干した稲の穂先から籾を取り出すための道具。
櫛状に並べられた鉄の歯に稲穂を通し、籾を引っ掛けて分離(脱穀)させる。歯が多くあるから千歯扱(こ)きと呼ばれるようになったとも、千把(千束)扱(こ)くことが出来るので千把扱きと呼ばれるようになったともいう。
「千歯こき」 (画 像)

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