う し お に
牛  鬼


牛鬼像(根香寺) 香川県高松市の西に五色台という名の山がある。これは青峰、紅峰、黒峰、白峰という五色の名を持つ山嶺よりなることに由来している。
この中の青峰に山岳仏教の古刹で、四国霊場八十二番札所の青峰山根香寺(ねごろじ)があり、ここに寺宝として『牛鬼の角』が伝えられている。

それは今から約400年ほど昔のこと。この青峰には“牛鬼”という化物が棲んでいた。その姿は、その名が示すように体は牛のように大きく、頭には長く鋭い2本の角、爛々と青く光る大きな皿のような目、耳元まで裂けた大きな口には鋭い牙、太い腕から伸びる3本の指には鉤のような爪があり、その全身は針金のような毛に覆われていたという。
この牛鬼が夜な夜な里に現れては人畜に害を与えるので、時の領主は心を痛め、幾度となくこの牛鬼退治に豪の者を遣わすのだが、誰一人としてこの牛鬼を討ち取ることは出来なかった。
困り果てた領主は、京の足利将軍の家臣に山田蔵人高清(一説には塩田教清とも)なる弓の名人が居るということを聞き及び、この高清に牛鬼の退治を頼んだ。
かくして、高清は弓矢を携え幾日も青峰の山中に牛鬼の姿を求め歩いたのだが、一向に牛鬼の姿を見つける事が出来ない。そこで高清は、根香寺の本尊千手観音に百日の祈願をかけ、牛鬼が正体を現すようにと一心に祈った。
そして満願の百日目のこと、根香寺からおよそ五十五間(約100m)ほど離れた崖の下に、爛々と青く輝く大きな皿のような目をした牛鬼を見つけたのだった。
高清は臆する事無く六人張りの弓に十三束三伏せ(約 1m10cm)の矢をつがえ、牛鬼めがけて矢を放った。矢は牛鬼の眉間に突き刺さったが、それでもなお牛鬼は高清めがけて猛然と襲いかかって来る、高清はひるむことなく続けざまに二の矢、三の矢を射掛けた。その三の矢が大きく開いた牛鬼の口の中に深々と突き刺ささり、牛鬼は一声吠えて逃げ去っていった。
逃げた牛鬼の血の跡を辿って行くと、半里(約2km)ほど西にある定ヶ淵で息絶えていた。それを見た高清は祟りを恐れ、その角を切り取り村人から寄進された米十五俵を添えて根香寺に奉納しその菩提を弔ったという。

それが今もこの根香寺に寺宝として伝わる牛鬼の角の由来だという。

牛鬼の伝説は各地にあり、隣の愛媛県の宇和島にも牛鬼の伝説がある。
それによると、山伏により討ち取られた牛鬼はいくつにも切り分けられ、その時七日七夜にわたって流れつづけた血が香川県根香寺の牛鬼淵、高知県土佐山の牛鬼淵、徳島県白木山の牛鬼淵になったという伝説もある。
(写真は根香寺境内に建つ「牛 鬼」の像)

牛鬼像 : 香川県高松市中山町1506 根香寺

参考資料 : 『塩江町史』 塩江町史編集委員会 編・発行 (1970)
『牛鬼 山田蔵人伝 塩江物語』 島上亘司 著 美巧社 発行 (2016)
現地解説板(香川県 昭和59年3月 設置)

関連記事 【 牛鬼の手のミイラ 】

#妖怪 #牛鬼 #寺院 #香川県 #徳島県 #愛媛県 #高知県